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ハワイのニュース

   

特集“米同時多発テロ事件の影響によるハワイの失業者”

 9月11日の米同時多発テロ事件以来、アメリカではあらゆる面で影響を受けている。今年10月の全米失業率は、5.4%。10月の1ヶ月間に、全米で約41万5千人もの人が職を失った。
 観光業が第一産業のハワイ州も例外ではない。過去9年間経済低迷が続いているハワイは、米同時多発テロ事件で、更なる打撃を受けている。観光客の減少により、航空会社などの関連企業は縮小を強いられ、失業者の数が増加している。州労働関係局広報官代理のトム・ジャクソン氏にハワイ州の失業者の実態、米同時多発テロ事件後の変化などについて聞いた。


●米同時多発テロ事件以来、失業者数、失業率にどのような影響や変化がありますか。また、これからまだ失業者数は増加しそうですか。

 テロ事件以来、最初の2、3週間は、失業保険申請者数が増加しました。当時は申請者が申請事務所に入り切らず、部屋の外で順番を待つ人がかなりいました。今はその当時ほどではありませんが、テロ事件以前よりは失業保険を申請する人は多くなっています。このまま何も無ければ、峠は越えたと見ています。
 また、中には一旦解雇されてもすぐに職が見つかる場合もありますし、雇用主が早まった判断をした事に気付き再雇用する場合もありますから、当局では今その数を把握しようとしています。
 失業率は、総労働人口に対する失業者数の割合をいい、実際に失業保険を申請する人の数だけではなく、ある計算方式に基づいて割り出される数値で、それを割り出すには時間がかかります。現在、出ている一番新しいハワイ州の失業率は、9月のもので、4.5%です。これは8月と同じ値ですし、昨年9月の4.2%に比べて0.3%の伸び率です。テロ事件の影響が失業率の数値に出るのは、10月分以降だと見ています。


●どのような業種が一番テロ事件の影響を受けていますか。

 観光業です。観光業はさらに、サービス業、ホテル、レストラン、交通に分かれています。その中では、特に航空会社やクルーズ船などの交通がテロ事件の影響を一番強く受けています。
 小売業やその他の業種は、まだそれほどテロ事件の影響を受けていません。影響は感じているけれど、まだ周りの様子を見ているというのが現状だと思います。


●観光業の失業保険申請者が増えているそうですが、それ以外で、申請者に性別、年齢、職種、雇用期間の長短など、何か共通点がありますか。

 特に女性が多いとか男性が多いとか、高齢者が多いとかいう特徴はありません。女性も男性もいますし、若い人から高齢者まで、幅広い年齢の人が失業保険を申請しています。また、雇用期間の長い人もいますし、短い人もいます。職種も様々です。


●テロ事件の影響を全く受けず、解雇者出ていない業種がありますか。

 連邦政府、州政府、市郡政府などの公務負が、テロ事件の影響で解雇されたケースは今のところありません。民間では、多かれ、少なかれ何らかの影響を受けています。


●求人に関して、テロ事件の影響や変化が何かありますか。

 テロ事件の影響で求人数が減ったという事はありません。事件以前と同様の求人数がありますし、業種、職種もほぼ同じです。失業者が増えても、その人たちがすぐに出来る仕事があれば、求人と求職が合致し、問題が無いのですが、実際はそうではありません。
 例えば、観光バスの運転手が失業をしても、コンピューター技術者の求人には申し込めません。その人がコンピューター技術も出来る人の場合は別ですが、通常コンピューター技術者の場合、それ相応の授業やトレーニングを受けていないと出来ません。
 ですから、例えば、100人の失業者がいて、100件の求人があれば、問題が無さそうですが実際はそうではありません。
 実際は、求人をしている会社は、その仕事が出来る人を依然として探していて、失業した人は自分の出来る仕事が無く、依然として失業者のままでいる事が往々にしてあります。


●テロ事件の影響で多数の従業員を解雇したハワイの会社がありますか。

 これまでハワイで一番大きな打撃を受けているのは、アメリカン・クラシック・ヴォヤージス(American Classic Voyages)です。ハワイの各島を巡るクルーズ船・インディペンデンス号などを運行する同社は、10月20日付で破産申告をし、全米で約2千人(内ハワイ州は約1,100人)の従業員が解雇されました。
 また、ハワイアン航空は約430人、アロハ航空は約250人、アトランティス・サブマリンは約150人、DFSギャラリアは約70人の従業員を解雇しました。
 でも、ハワイアン航空やアロハ航空は、連邦政府からの援助金が得られた事もあって、一旦解雇した従業員を数週間後に再雇用したケースもあります。ですから、実際の数はこれよりかなり少ないと思います。
 また、当局では、コンチネンタル航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空などの航空会社からも、従業員を多数解雇したという情報を受けています。しかし、ハワイアン航空やアロハ航空などと同様に、連邦政府の援助金が得られ、一旦解雇した従業員を再雇用したケースもあります。また、本社が本土にあるこれらの航空会社では、ハワイで解雇されても、アメリカ本土の支社ですぐに再雇用される場合もかなりあるので、実際何人解雇されたかという数字を掴むのは難しいです。


●テロ事件のあと景気のよくなった業種がありますか。

 私の知る限りでは、ハワイ州では特にありません。どの業種も周りの様子を見ている状態だと思います。


●テロ事件の影響で解雇された人に特別な配慮がありますか。

 ハワイ州労働関係局としては、テロ事件の影響で解雇された人だけに特別に与えられる配慮や恩典はありません。失業保険給付は一時的な援助で、失業者が永久に給付されるものではありません。
 しかし、当局では失業保険を申請した人で生活の援助を必要としている人に対しては、他の管轄機関の援助プログラムなどを紹介しています。例えば低所得者や母子家庭などには、州厚生局(Department of Human Services)のフードスタンプ、健康保険援助、職業訓練援助など、各種の援助プログラムがあります。
 また、低所得者で法律相談を求めている人には、リーガル・エイド・ソサエティ・オブ・ハワイ(Legal Aid Society of Hawaii)があります。
 職を失ってまず一番困るのは、健康保険が無くなってしまう事ですが、当局では、それに対しての特別措置はありません。


●テロ事件の影響で失業者が増加したため、州議会では、失業保険給付期間の26週間を更に13週間延ばし、39週間にする法案を可決しました。その法案は、いつ法律になり執行されますか。また、それはいつ頃まで執行されるのですか。

 カエタノ知事が11月2日にその法案に署名をしたので、その日から法律になり、執行されています。この法律によると、9月11日以降、失業保険を申請した人は再就職出来なければ、現行の26週間から13週間延長され39週間まで失業保険が給付されるようになりました。
 この法律では、13週間の延長は来年の6月30日まで執行される事になっています。州では、その頃になれば、一応経済状況が回復するだろうと予測しています。その頃、まだ多くの失業者が再就職出来ないようなら、更新が州議会で審議されます。


協力:イースト・ウェスト・ジャーナル 
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