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ハワイのニュース

   

“ハワイに安心して来て下さい” あの手この手の日本人観光ツアー復活大作戦


 米国中枢同時テロに端を発したアフガニスタンのタリバン政権及びテロ組織(アルカイダ)に対する報復攻撃が始まって1ヶ月が過ぎようとしているが、世界規模の景気低迷は止まらない。とりわけ航空業界、観光業界への打撃は大きく、アメリカにおける観光客の数は激減している。
 特に日本人観光客への影響は大きく、日本の2大航空会社も減便、運休といった措置で急場をしのいではいるが、この戦いが2年以上に及べばその影響は計り知れないものとなるのは必至である。
 ハワイ観光業への打撃は甚大で先の見えない暗闇の中にある。ハワイ州政府として現状を打破すべくいろいろな動きを見せている事は、湾岸戦争の時に比べても異様と言えるほど素早いものがあった。炭疸菌や別の報復テロの恐怖が拭い切れない不安も、日本人のハワイ来訪の妨げになっているようだ。日本の11月の連休、年来年始を前に、業界筋へのインタビューを中心に、現状及び今後の予想についてまとめた。

 ワイキキのビジネスは、今月に入って更に厳しさを増すというのが大方の見方だ。ホテル、レストランは、更なる人員カット、営業時間短縮を行なう所が出ているし、周囲の環境を見てみると、米国大手クルージング会社の破産申請、JALが先月からの減便に加え、12月下旬までという期間限定で仙台及び新潟便の運休に踏み切った。テロ事件以前に既に発表していた事だが、全日空は週7便あった名古屋便を先月末で運休している。
 一方、テロ事件の影響により仕事を失った、または自宅待機となった人がすでに1万人を超し、今も増加傾向にある。カエタノ・ハワイ州知事は、緊急雇用対策として100万ドルの公共投資案を発表した。現在、緊急に召集された州議会で審議中だが、議会は全てを受け入れる様子は見せていない。少しでも内需で持ち応えようと考えるカエタノ州知事の考えとは裏腹に、やはり基幹産業である観光業への依存度が高くならざるをえないハワイの実状が浮き彫りになった。
 今後の見通しについては、どこからも良くなるという具体的な話は聞けなかったが、ハワイ州全体がテロ事件以来1ヶ月が経ち、このまま指を咥えているわけにはいかないという気運が出始めている。一部ホテル内にあるレストランでは、一旦営業を止めていた時間帯の再開をする所も出てきた。
 米本土からの観光客の戻りは日本人観光客より早く、日本人観光客への依存率の高いワイキキに比べ、ネイバーアイランドではその悪影響が多少であるが緩和されているよう。
 そんな中にあって、テロ事件直後からハワイ州政府及び観光業界の動きは驚くほど素早かった。カエタノ・ハワイ州知事を団長とする総勢約20名の観光誘致特別使節団(アロハ・ミッション)が、10月8日〜11日(日本時間)の4日間にわたり東京と大阪を訪問し、ハワイの安全性を伝え、日本人観光客への観光誘致を行なった。
 使節団には、ジョン・ワイヘエ、ジョージ有吉・前元ハワイ州知事、ハリスホノルル市長代行のジョン吉村ホノルル市議会議長を始めとするオアフ、マウイ、ハワイ、カウアイ各島の郡長、ハワイ旅行協会(HTA)、ハワイ観光局(HVCB)のメンバーらが参加した。
 使節団は、東京の経団連会館で行なわれた日本・ハワイ経済協議会の一部門である観光部会主催の「緊急ツーリズム・サミット」の中で、日本の旅行業者、航空会社及び観光産業界のトップ陣に対し、テロ事件がハワイ州経済に甚大な影響を及ぼしている実状を説明すると共に、日本人観光客のハワイ州への経済効果が大きく、大幅に減少している日本人観光客数を増やす事が、迅速なハワイ経済復興に寄与するところが大きい事を強く訴えた。この会議に日本側からは、経団連メンバー、旅行業界関係者、メディア約100名が参加した。
 同様に大阪で行なわれた会議では、関西経済同友会のメンバーと活発な意見交換を行ない、ハワイへの観光誘致を積極的に行なった。
 東京、大阪それぞれにおいて、カエタノ州知事、ジョン・ワイヘエ、ジョージ有吉、両元州知事、ハワイ出身の東関親方(元高見山)、曙親方が出席し記者会見を行なった。その模様は、日本全国にテレビ放映された。また10月中旬には、日本の全国版新聞に全面広告を掲載し、ハワイへの観光誘致を積極的にに行なった。
 サミットの中で、こうした動きが今回だけの単発に終わらず、ハワイ側からのウェルカム・メッセージを引き続き出して欲しいという日本側からの要望が出た。それに対しハワイ側は、HVCBより今後も積極的に新聞広告やテレビのコマーシャルなど、ハワイ観光誘致の宣伝を続けていくと回答した。
 同行したJTBハワイの浅沼正和ホノルル支店長代理は、「テロ事件以来、日本人の海外旅行熱が全般的に冷え込んでいます。会議の中で日本の旅行業界は、ハワイはその牽引役になるだろうと、関連する業界全てがハワイへの送客に注力するという意見が大半を占めました。今回のように、ハワイ州政府が日本人観光客をこれほど重要視し、日本の旅行業界も業界全体が同じ方向で一体化した動きをするという事は画期的な事です」と、サミットの感想を語った。
 ハワイの親光業、引いてはハワイ州経済にとっては大変ありがたい話であるが、実際のところ業界全体で施策を打つといってもそれ相当の時間がかかる事は安易に想像がつく。
 アロハ・ミッションでカエタノ州知事は、小泉純一郎首相、扇千景国土交通相、石原慎太郎東京都知事、太田房江大阪府知事と会い、それぞれにハワイの観光誘致を訴えた。小泉首相が「I love Hawaii」と発言した事が、日本の新聞やニュースでも取上げられた事は、既にご存知の読者も多いと思う。
 使節団は、それ相当の手応えがあったとしているが、最近の日本人観光客来訪数を見ていると、その効果は残念ながら「今後に期待」と言ったところだ。
 その観光客数の現状だが、米本土からの数は前年度に比較して80%以上の水準に戻ってきている。それに対し、日本人観光客の数は、9月末頃から順調に戻り始めたものの、ちょうど報復攻撃が始まった10月7日をピークに減少に転じ、最近の状況は、前年に比べて5割を切る水準まで落ち込んでいる。
 ハワイ州政府産業経済開発観光庁の納谷誠二庁官は、「日本人観光客の戻りいかんが、ハワイ観光業界引いてはハワイ経済の復興のキーです」と語っている。
 11月から始まった日本人観光客に重きを置いたキャンペーンの実施や例年、日本人観光客が増える12月のホノルルマラソン、来年1月に行なわれるソニー・オープン、同3月のホノルル・フェスティバルとイベントが続くが、HVCBが目標を立てている来年6月までに従来の観光客数を確保するために、別の施策も計画、随時実施していくとしている。その具体例として、「来年4月から放送予定のNHKの朝番組『さくら』のロケが今月から始まり、長期にわたり撮影が続くと聞いています。そうしたものに絡めて、例えば日本から人気タレントをハワイに呼び、イベントを実施する事も考えています。時期としては、来年早々に実現したいですね。今、日本の大手広告代理店の電通からも、イベントの手伝いをしたいと申し入れを受けています」と、納谷庁官は説明している。


主に日本人観光客の増加を狙った「スーパー・バリュー・ハワイ・キャンペーン」、「アロハ・マジック福袋キャンペーン」の効果に期待


 ワイキキ、アラモアナ地区の約100店舗の参加で10月1日〜来年の1月3日までの約3ヶ月間にわたり展開中の「アロハ・マジック福袋キャンペーン」は、観光客の購買欲を上げる目的で、HVCBが主催し始めたもので、店舗により、ディスカウントや無料記念品といった恩典を買物客に付けている。
 スタートして1ヶ月経ったが、その効果を語るには、観光客自体が激減している現状では難しいところがある。この企画はテロ事件発生以前に計画されたもので、その期待された効果がテロ事件の影響で期待通りに現れてこないのは致し方がない。
 11月1日から始まった「スーパー・バリュー・ハワイ・キャンペーン」は、先の使節団がその目玉として持参したハワイ側の企画だ。
 このキャンペーンは、前記の福袋キャンペーンと違い集客を目的としたもの。内容には似通ったものがあるが、参加店舗が既に1200店舗にのぼり、範囲も全島に及んでいる。参加店舗数は今も増えており、最終的に1500店舗を超える勢いだ。キャンペーン期間は、来年1月末までの3ヶ月。この期間については、状況によって更に延長される可能性がある。
 その内容は、18才以上の全ハワイ訪問者を対象として、10日間有効な「ハワイ・バリュー・パス」を発行する。有効期間中にパスを提示すれば、キャンペーン参加店や施設で様々な特典が受けられるというもの。
 特典として、ホノルル・アカデミー・オブ・アーツ、ミッションハウス・ミュージアム、ハワイ陸軍博物館、クイーン・エマ・サマーパレス(オアフ島)、フリヘエ・パレス、ライマン博物館(ハワイ島)、カウアイ博物館(カウアイ島)、アレクサンダー・ボールドウイン砂糖博物館、バイレイ・ハウス博物館(マウイ島)などの入場料が無料。また、ハナウマ湾、ホノルル動物園、フォスター・ガーデンの入場料が半額になる。
 参加店は、ロイヤル・ハワイアン・ショッピングセンター、ABCストア、ヒロハッティ、バーバリー、ワイランド・ギャラリー、アイランド・ウクレレ(小売)、ミッシェル、ふるさと、ピザ・パラディソ(レストラン)、カパルア、ワイケレ、ワイコロア(ゴルフ場)、クアロア・ランチ、ナバテック・クルーズ、パラダイス・コーブ、ポリネシア文化センター、ハワイアン・アドベンチャーパーク、ウエスト・マウイ・パラセイル(アクティビティ)、ビショップ博物館、カウアイ・チルドレンズ・ディスカバリー博物館、ワイメア・フォール・パーク、コナ・ヒストリカル・ソサイアティ、マウイ・カルチャー・アーツ・センター(アトラクション)など、全島に及んでいる。
 特典の内容については各々の参加店に一任されているが、各参加店も、現状打破に向け必死になっていることは間違いない。これまでになく大出血サービスを考えている参加店もあると言う。
 このキャンペーンについて主催しているハワイ観光局のスティーブン松尾・日本担当営業ディレクターは、「湾岸戦争時には、観光客の落ち込みを回復するのに約半年かかりました。今回のテロ事件による落ち込みは、その時をはるかに上回る状況です。今回のキャンペーンに、これだけ多くの企業・店舗が参加した事は、ハワイの観光業始まって以来の事だと思います。各企業、店舗が黙って待っているよりも、何かをしなければという意気込みを強く感じます。このキャンペーンの効果が一日も早く現れるように、我々も日本に対する宣伝をどんどん行ない、援護していくつもりです」と語った。


12月のホノルルマラソンの集客がその後を占う一つのバロメータ、と業界筋


 最近、日本で発表された集計結果によれば、テロ事件発生後、海外旅行をキャンセルした数は、75万人に達したという。行き先としては、特に米本土、ハワイが目立つという。75万人の内訳を見てみると、修学旅行客を含む団体がトップで、続いてパッケージツアー客が続いている。
 逆に、財団法人・日本交通公社が、咋年中に海外旅行した3大都市圏の約300人にアンケートしたところ、今後1年間に旅行の計画や意思があるという人のうち、「何らかの形で実行するつもり」という人が64%いたという。何があっても海外旅行に「やっぱり行く」が全体の3分の2いるという事になる。
 但し、渡航先の選択として、ハワイについては当分控えたいという意見が全体の30%、米本土については、約80%に達したとしている。
 スーパー・バリュー・ハワイ・キャンペーンなどの集客イベントとは別に、12月9日(日)に行なわれる第29回ホノルルマラソンの参加人数が、その後の日本人観光客数を占う一つのバロメータになると考える筋が多い。主催者のJALは、テロ事件発生後、今年の開催を早々と再確認した。
 JALの馬場弘人ホノルル支店長は、「当社の兼子勲社長は、今年のホノルルマラソンには、例年にも増して力を入れています。実際に参加して走る事はしませんが、マラソンの日に自ら来布する意向を伝えてきています。また、当社の幹部だけでなく、日本の大手旅行社の社長にも積極的に声を掛け、同行のお願いをしています」と、JALとしてホノルルマラソンの参加人数確保に最大限の努力をしていると説明する。
 これには、日本人観光客に対してハワイの安全性を訴え、同社の送客数増を狙う目的があるが、先月、カエタノ州知事も参加した「緊急ツーリスト・サミット」に同席した兼子社長からの素早いレスポンスとも受取れる。
 ホノルルマラソンの参加応募締め切りは、当初10月末だったものを11月中旬まで延期した。地元参加応募者の受付けは、例年通り今月から始まり、12月8日で締め切られる。


戦況の変化、報復テロなど楽観視はできないが、一部旅行業者の12月の予約状況は昨年を上回る。


 日本の旅行業界・航空業界がハワイへの送客に努力すると言っている事は、大変喜ばしい事である。その努力の結果がある程度数字に反映したのか、先月、日本のJTB本社が発表した内容によれば、12月のハワイ旅行予約状況は、昨年の同時期に比べ10%以上の伸びを示しているという。
 また、日本の航空会社2社が以前発表した、日本(成田、関空)発ホノルル路線の超低価格航空運賃(12月上旬、来年1月下旬と期間限定であるが往復5万円)の効果にも期待がかかる。
 今月下旬から来月上旬予定で、皇太子妃雅子様は出産を控えられている。皇太子夫妻の第1子誕生が日本経済に明かりを差すかもしれない。現天皇が誕生した時、それまで不況であった日本経済が持ち直したという歴史的事実が過去にはあった。日本国民だけでなく、ハワイにとっても経済効果につながってくれると更に嬉しい事となる。
 今月は日本もホリデー・シーズンに当たり、連休が続く。またこれから年末、正月の観光シーズンを迎え観光客増加の期待が膨らむが、反面、戦争の状況変化、報復テロの発生など、波乱含みの状況である事も事実である。


協力:イースト・ウェスト・ジャーナル 
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