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ハワイのニュース

   

業界別ハワイの現況。

 同時多発テロは、多方面において大きな影響を及ぼしているが、観光産業が主たるこのハワイにおいては、その影響は甚大で、観光客の激減は航空業界、ホテル業界、レストラン業界、旅行業界など、観光業に携わる全ての業種にその影響が出ている。
 事件発生当日から完全に止まっていた日本人観光客は、5日目の16日(日)から徐々に増えてきているものの、未だ通常の半分に落ち込んでいる。ホテル施設の部分閉鎖、レストランの営業時間短縮、あらゆる業界にわたってのレイオフなど、その実状は危機状態を呈している。その実態を業界別に調査した。

●航空業界

 事件発生当日の11日には、日本からや米本土からの到着便に影響があった。アメリカ連邦航空局(FAA)が、アメリカ史上初めてという全米にある空港での航空機の一切の離発着禁止命令を発動した事により、日本から到着する予定だった便のうち数便が途中で引き返したり、到着地をホノルル空港からハワイ島コナ空港に変更されたりした。中には、ロサンゼルス行きだったのが、ホノルルに着陸した便もあった。
 JALの馬場弘人ホノルル支店長は、「現在は通常運行に戻っていますが、1日当たり11〜12便の運行に対し、乗客が300〜400人と、一時は通常1割程度まで落ち込んでいました。但し、日本からのツアーが解禁となった9月22日からは、2,000人前後で推移しています。米国による報復の長期化によっては先行きが不透明となりますが、10月一杯はこの状況が続くと予測しています。米本土便への影響はかなり大きいですが、それに比べてハワイ便への影響は、今のところまだ軽くすんでいます」と語った。
 今後JALでは、コナ便を除き、一日当たり2〜3便を減便する予定(実施済み)。
 北米路線の減収が深刻となっているJAL、全日空では、「今後の情勢次第だが、経常損益段階での前年比の落ち込みが、相当大きくなる可能性がある。(兼子勲、日本航空社長)」「減収が一過性にとどまるかどうかが、分からない。(大橋洋治、全日空社長)」と、両社のトップがコメントを出している。
 一方、地元のハワイアン航空では、離発着禁止が部分解除されてからは一旦、通常運行に戻したが、予約の少ない便のお客に依頼し他の便に移ってもらい、その便をキャンセルする措置を取っている。今のところ、お客からの不平不満は出ていないという。また、同社が旅行社とタイアップして実施している隣島への日帰りツアーは、事件発生当日からストップしていたが、19日から再開している。徐々にその利用者も増えているというが、通常に比べ、60〜70%に落ち込んでいる。
 今後の動向だが、現状では10月のグループ旅行に関して殆どがキャンセル状態。既に来年1月分のキャンセルも入っているそうだ。但し、パッケージ・ツアーの予約に関しては、キャンセルではなく延期になっているケースが殆どだという。また、この傾向も、米国の報復の展開状況によってどう変わるか予測できないと、同社では懸念の色を示す。
 米航空各社は、テロ事件以前から需要減退で業績が厳しくなっており、この事件が引き金となって大幅人員削減などのリストラが始まり、10万人規模のレイオフが始まっている。。

●ホテル業界

 現在、ワイキキにあるホテルの稼動率は一気に下降し、30〜40%台に落ち込んでいる。どのホテルでも、10月のグループ旅行は殆どがキャンセル状態。但し、日本人観光客の傾向としては、一旦キャンセルしても、時期を変更して再予約するケースが多く、キャンセルではなく延期という見方がされている。
 通常だと9月頃から増える修学旅行のグループも、事件発生以来、10月末までは全てキャンセルとなっている。しかし、来生1月〜3月の間に、それらの再予約が入ってきているという。
 日本で会員制を持つホテルでは、「ハワイは安全です」とアナウンスし、会員の来布を促していると言う。インターネットを通じ直接予約を取っているホテルでは、必然的に個人客が対象となるので、この先予約状況がどのように推移するか、見通しが難しいという。ツアーと違って個人客の場合、予定直前まで様子を見られるからだ。
 どのホテルも、10月末までのキャンセルに対してキャンセル料を取らないようにしている事も、その要因となっているようだ。
 観光客数が激減している現実から、レストラン等、施設の部分閉鎖、多棟を有するホテルの中には、新しくチェックインするお客を一つの棟に集約し、その他の棟をクローズするところも出てきている。また一部には、従業員のカットなど、リストラを始めたところも出始めている。
 9月22日頃から、日本からのツアー客が増え始めているため、全般的に稼動率は回復傾向にあるが、報復の長期化によってはキャンセルが続きそうだと、先行きの不透明さにどのホテルでも今後の対応に苦慮している。
 中には、稼動率を上げるため、スペシャルキャンペーンを実施したり、飲酒し運転して帰れない人達の宿泊利用をキャンペーンしたりと、知恵を絞っているホテルもある。
 事件発生当日から、帰りの便が飛ばなくなった観光客は、自費でホテルに泊まる事になった。そういった人達に対し、ホテル側は、50〜80ドルという格安価格で、延泊者に対応した。また一部のホテルでは、事件発生当日入ってきた客の部屋数を確保するために延泊が受けられない状態が発生し、宿を失った客は他のホテルに流れたケースもあった。全般的に、宿泊に関する混乱はなかった。

●レストラン業界

 ホテル内にあるレストランでは、部分閉鎖、時間短縮、従業員カットなど、あらゆる手段を講じているが、通りにあるレストランは、従業員のカットはそれなりに進めているが、営業時間の短縮や閉鎖などはまだ行っていない。
 ワイキキにあるレストランの中には、50%OFFとか、ニューヨークやワシントンDCで被害に立った人達への義援金となるスペシャル・メニューを出したりと、いろいろな趣向を凝らし客寄せを考えている。
 一方、米国の報復が長期化すれば、体力のないレストランを危ぶむ声も挙がっている。確かに報復が長引けば、その分観光業への悪影響はさらに深刻さを増す事が予測される。

●旅行代理店

 日本側の報道によれば、JTBで9月12日〜30日の間に北米向けパック・ツアーに予約していた人数が1万6千人で、これら全てが中止になった。
 近鉄インターナショナルによれば、今回のテロ事件による日本人観光客は、同社レベルで25%までに落ち込んでいると語っている。特に、修学旅行客は、来年の3月まで殆どがキャンセルとなり、国内旅行に切り替わっているそうだ。
 今後については、米国の報復が長期化すればするほど、ハワイ観光業の冷え込みは更に厳しくなると見られている。
 ウェディング産業でもキャンセルが相次いでおり、予定通り来布した人達は、ハワイで結婚式を挙げるため来布する人数を最小限に押えるようにしているようだ。通常だと、親戚筋まで同席していたものが、当人同士とその両親だけに絞られている。その他、DFSの営業時間が午前11時〜午後10時に短縮された。また、ABCストアの営業時間の短縮、ワイキキ・トロリーの本数削減、イエス・ショーの公演打切りなどがある。

 クレジット会社のJCBによれば、事件発生後から数日間に、明らかにテロ事件の影響による事象が報告されている。
 まず、JCBカードでのホテル代の支払の激増、次に国際電話使用料の激増など、通常の4倍に当たる利用があったという。また、同プラザに置いてある会員専用のコンピュータを使い、情報を取ったり、日本の人達にe-mailを送ったりした使用料が過去最高だったという。
 米国による報復は長期化の様相を呈しているが、ハワイ観光業に与える影響は計り知れないものがある。約10年前の湾岸戦争時の状況とは比較にならない状態になると予測する観光業界の声が圧倒的に強い。


協力:イースト・ウェスト・ジャーナル 
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