トレードウインド
TRADE WIND

トレードウインドを受け続けて曲がってしまったモロカイ島の木

ハワイに移り住んで10年以上になる友人が、ハワイでもっとも好きなもののひとつにトレード・ウインドを挙げた。日本語で貿易風と呼ばれるこの風は、偏西風などと同じで常に一定の方向に吹く風である。ハワイ諸島がある北半球では北東の方角から吹き、日中の暑さを和らげてくれるだけでなく、ハワイのさまざまな自然の香りを運んでくる。朝晩、トレード・ウインドに吹かれながら、お気に入りの公園を散歩する時間が好きだと、彼女は語った。

モロカイ島にプウ・オ・ホク・ランチという牧場がある。島の東端に近いところに位置し、なだらかな牧草地の向こうには青い海が広がっている。風を遮るものは何もない。牧場の柵沿いに1本の樹が立っている。長い間、トレード・ウインドをまともに受け続け、真っ直ぐに伸びることができなくなってしまった。風の力、恐るべしである。

トレード・ウインドを受けているのは樹だけではなかった。放牧されている牛たちだ。果たして、彼女のように心地よいと感じているのだろうか。青い海と目の前に浮かぶマウイ島を眺めながら、風に吹かれる牛の想いやいかにである。

(Puu O Hoku Ranch, Molokai)