ペレ
PELE

ペレ

本題とは関係ないが、米国のニュース専門チャンネルCNNの放送を日本で見ることができるようになったのは1984年のことだ。世界各地のニュースが次から次へと流されるそのスタイルは斬新であり、深夜にもかかわらず、毎日のように見入っていたものだ。ある夜、溶岩流が町に押し寄せ、家を焼き尽くす映像が飛び込んできた。目が釘付けになった。それがハワイ島東海岸の町、カラパナであった。

20年以上経って、当時と同じプウ・オオ噴火口から流れ出る溶岩流を見る機会がやってきた。辺りが暗くなるにつれ、目の前の光景は神秘的なものになっていった。なぜ、この地で溶岩流が見られるのか、あるいは直ぐ近くまで寄っても危険が少ないのはどうしてか、今でこそ科学的根拠に基づく説明をすることは簡単だ。だが、数メートル先を煌々と流れる溶岩に科学を超えた神懸かり的なものを感じずにはいられなかった。

ハワイでは古くから自然崇拝が行われていた。大陸から隔離された島々にあって、自然の力は偉大であり、跪くべきものであった。そして多くの神話が語り継がれた。登場する幾多の神々の中で、最も有名なもののひとつが火の神 ペレである。ペレはキラウエア火口に住み、溶岩の流れを操っているとされている。気まぐれで嫉妬深いペレの機嫌を損ねると、大変な目に遭うということだ。

流れる溶岩を見ながら、ペレのことを思い出した。古代ハワイの人々が自然に対して抱いた畏敬の念、そして今でも多くのハワイの人々がペレに捧げる祈り。自然の中で生きることの意味が少しだけわかったような気がした。

(Volcano, Big Island)