制限速度15マイル
SPEED LIMIT 15M/H

ハワイ島で溶岩流に埋まった制限速度15マイルの標識

その標識には「制限速度15マイル」と書いてある。時速にしておよそ24km/hだ。いったい誰がどうやって、こんなデコボコな道を15マイルで走るのだろうか。いや、ここは道ではない。だとしたら、誰かが悪戯でこの場所に道路標識を立てたのか。それも違う。正解はこうだ。ここは、かつて道路だったのだ。それも歴とした2車線の舗装路だ。

1983年に始まったキラウエア火山の噴火は、現在もなお続いている。その間に噴出された溶岩流は、キラウエア火山の東側の広大な地域を埋め尽くしてしまった。住宅は焼け、農地や道路はもちろん、何もかもが溶岩流の下敷きとなった。この地にあった村は消滅した。残されたのは、溶岩が冷えて固まった真っ黒な荒れ地だ。

道路が溶岩流で寸断された場所から、溶岩台地の上を歩くトレイルがある。しばらく歩くと、見渡す限り同じ光景が続き、不思議な気分になってくる。自然の畏敬を感じずにはいられない瞬間だ。役割を終えた制限速度15マイルの標識が、墓標のように立っていた。

(Wahaula, Big Island)